Runnig up that hill

晴れ。あつい。洗濯物がよく乾いて結構だ。こんばんは、ミリーボビーブラウンです。

俺はストレンジャーシングスが好きだ。このことは以前にも書いた( https://poppo.hatenadiary.jp/entry/2021/11/07/200742 )。いよいよシーズン4が配信開始されている。今日の時点では7話まで配信されているが、これは全エピソードではなく、7月以降に追加エピソードが配信される。ところで、俺は7話全て見終わっているのだが、その中でも第4話がマジでよかった。上でリンクしてあるネバーエンディングストーリーに匹敵する良さだったのでここに書いていきたい。都合上、ストレンジャーシングスシーズン4のネタバレを思いっきりするので、困る方はページを閉じられたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーズン3にてマインドフレイヤーを(とりあえずは)打ち倒し、ゲートを閉じたイレブンたちだったが、今度は人型のクリーチャーが裏の世界から攻撃を仕掛けてくる。ダスティンたちに"ヴェクナ"と呼ばれているこのクリーチャーは、裏世界から人間の意識内に入り込み、生体エネルギー?のようなものを吸う。エネルギーを吸われた人間は、体の内側から猛烈に吸引されたように、体中の骨が折れ、目が潰れて凄惨な死を迎える。ヴェクナがターゲットにするのは、心の中にトラウマや罪悪感を抱え、寂しさや孤独の淵に立っている者。その心の闇の隙間に入り込み、裏の世界へ連れていくのだ。その毒牙は、マックスにも迫っていた。

ビリーの死後、マックスは苦しんでいた。自分のせいでビリーが死んだのかもしれない、と。なんかいい感じだったルーカスとも別れてしまった。そのルーカスは高校デビューしてイケイケになりつつあるし、ダスティンとマイクはオタクサークルでよろしくやってるし、自分がいられる場所を見失っていた。マイクたちと出会った時のような、孤独で他人を遠ざける少女になってしまっていた。その隙間をヴェクナに魅入られ、マックスはヴェクナの世界へ取り込まれてしまう。

ヴェクナの呪いに対して、音楽が有効であるらしいことを突き止めたダスティンたちは、マックスの好きな曲を探し、彼女のプレイヤーで再生する。その曲はケイト・ブッシュの『Running up that hill』。その曲を聴いた途端、ヴェクナの意識世界に、現実世界とのポータルが開かれた。そしてマックスは、ルーカスたちと過ごした日々を思い出し、ヴェクナの拘束を逃れ、現実世界へと脱出する。

俺は昨日、このシーンを3回見直して3回とも涙した。感動した点は二つ。ひとつは言うまでもなく彼らの愛深き絆に、もうひとつは流れている曲が意味していることに、だ。ここでは2番から音楽が流れ出す。その歌い出しはこうだ。

"You don’t want to hurt me
But see how deep the bullet lies"

要するに、そんなつもりはなくても、男女は(他人と他人は)傷つけあってしまう。分かり合えないことがある。どうしようもない溝が生まれてしまう。ルーカスとマックスもまた、あんなに仲良かったはずなのに別れてしまう。その詳細な理由は語られない。語っても仕方のないことだからだ。"わたし"と"あなた"が分かり合えないこと、ゆえに傷つけあってしまうこと。それは本当に、わたしたちだけが悪い問題なのだろうか。わたしたちがわたしたちである限りどうしようもないような気もする。だからこの歌はこのように歌う。

"And if I only could
I’d make a deal with God
And I’d get him to swap our places
Be running up that road
Be running up that hill
Be running up that building
Say, if I only could, oh…"

彼と私を入れ替えてほしい、そうすれば私はあの丘もあのビルも駆け上がれるのに、と神に願う。ここでは敢えて、身体的側面だけが歌われるが、この入れ替えとは、即ち"わたし"と"あなた"が完全に理解し合うということだ。"あなた"が"わたし"自身に、そしてその逆になること、それだけが他者との理解を成す唯一の手段、でもそれは叶わない、ああそれができたらなあ。そんな歌をマックスは愛している。「ケイト・ブッシュの魔法」とまで呼んで。マックスはずっとそれを望んでいたが、失うことの恐怖や自分の素直になれなさからできずにいた。奇しくもエルと喧嘩中のマイクにウィルが言う。

「誰かに自分の本心をさらけ出すなんて怖くて当然だよ。相手が大切な人なら特にね。」

だがマックスは、死を直前にしてうっすらと気づいた。他者と生きたい、わたしの世界は独りじゃないと。そして地獄から駆け出す。もう俺は嗚咽しながら彼女を応援することしかできない。ヴェクナはマックスへこう言う。「You belong here(お前の居場所はここだ)」表の世界は帰還したマックスはつぶやく、「I'm still here(まだ生きてる)」このセリフは直訳すれば「わたしはまだここにいる」だ。つまり、ヴェクナが支配する孤独の世界ではなく、他者と歩んでいく世界、傷つけ合いながら補い合いながら手を取り合い暮らす世界をマックスは選んだ、ということを意味していると感じた(セリフは聞いた感じなのでこれが違ってたら恥ずかしい)。うーん、シーズン4は熱いです。