晴れ。暑くて倒れそう。今朝の出勤時、グロッキーになって駅員に車椅子に乗せられてる人を2人も見た。お水を飲んでくださいね。こんばんは、平井ももです。
先週末、初めてドライヘッドスパにいった。お店はかの有名な悟空のきもちだ。ドライヘッドスパ=悟空のきもちではないのだけど、俺は知見がないのでほとんどその図式になっている。悟空のきもちは、お店が話題になり始めたくらいから知ってて、ずっと行ってみたかった。ゴッドハンドのなんとかさんが可愛いとか、「絶対寝ないんで!」と豪語するYouTuberがまんまと寝てしまうとか、しょっちゅう見てた。俺はそういう、他人が気持ちよくなっている映像が好き。だが、悟空のきもちはその予約ハードルの高さから行かずにいた(この、予約が取りにくいこと自体が人気を高めている気もする)。何度か行くと他に1人連れて行けるという制度があるらしく、誰かがそのチケットをゲットするのを待っていたのだが、なんか普通に予約とれたので、チケットを待たずにひとり向かったのである。東京には原宿と銀座に店舗があるが、今回は原宿の予約が取れた。俺が動画でずっと見てたのも原宿なので嬉しい。
これが入り口。原宿の裏路地、かつてフリークスストアがあり、いまはアソビシステムの事務所になっている建物の隣ぐらいにある細いビルだ。こんな小さいビルに!?と驚いたが、恐る恐る入ってみる。するとどでかい脳みそが迎えてくれる。
この脳みその前にいくつか椅子があり、そこで受付待ちの方々が4〜5人いた。受付ではお姉さんたちが個室の空き状況と案内の順番を打ち合わせている。忙しそうである。エステティシャンらしい被りのブラウスに、エスニックな雰囲気があるワイドパンツがコスチュームのようだ。手持ち無沙汰でカオナシのように指遊びをしながら突っ立っていると、お姉さんが声をかけてくれる。名前と予約時間を伝え、椅子で待つように促される。脳みその真向かいにレジがあるのだが、その上にスクリーンがあり、謎の映像が流れている。悟空のきもちのコンセプトは眠りと脳に関する研究を基にしており、それはハイタワー三世みたいな名前の外国人がアマゾンで謎の壁画を見つけたところからスタートしているそうだ。マジかよ。資料映像のようなものが流れた後、黒いスーツに身を包んだ、ジェイソン・ステイサムみたいなおじちゃんが「さあ眠りの世界へ!」みたいなことを言っている(吹き替えで)。
そんな映像を1周半くらい見ていたら、最初に声をかけてくれたのとは別のお姉さんがやってきて、予約内容の確認をしてくれた。初めての利用であることを伝えると、このお店がどういうコンセプトでやっているのかを説明してくれた。曰く、悟空のきもちは気持ちよく眠りに落ちることで癒しを提供するのを目的にしており、コリをとるとか肩があがるようになるとかそういうことは目指していないとのこと。なるほどです。椅子に座りリュックを抱きしめながらしおらしく話を聞いているが、実は爆裂な便意を我慢しており、一刻も早くトイレに行く必要があった。話終わって、施術の前に先会計とのこと。しかしその前にトイレ貸してくれ!と頼んで駆け込み、それなりの難産を経てレジに戻る。キャッシュレスオンリーというのはいまらしい対応。ある程度の情報を乗り越えないと辿り着けないお店だし困る人はあまりいなそう。会計を終えると、お姉さんと一緒にエレベーターに乗る。原宿店は1階が待合室とレジ、2階と3階が施術ルームになっている。エレベーターの中で、お姉さんに気になったことを聞いてみた。
「あの、あそこで流れてた、壁画がどうのみたいなのって、なんですかね、、、どういうふうに見たらいいかっていうか、、、」
「あれは〜〜、、、作り話というか、、、」
「なるほどです!僕そういうの好きなので大丈夫です!」
そういうのというのはディズニーのアトラクション的なバックグラウンドストーリーのことを指しているが伝わったかはわからない。アトラクションなのだ、ここは。完全に理解した。エレベーターを降りる。
わかりにくいが、普通のサロンらしい白ベースの廊下の向こうにスペースマウンテンの乗り場みたいな空間が広がっている。時間がかかれた壁に覆われたかまくらみたいなのが個室で、7つくらいあったような気がする。このスペースマウンテンの手前で靴を脱ぎ、裸足もしくは靴下で乗り場(?)を歩く。個室に入り、椅子に座るように促される。いい匂いがする。強くはないが、ずっといい匂いが漂っている。ここからお姉さんは小声で話す。他のルームにはぐっすりと眠っているお客さんたちがいるからだ。「こちらに足をのせてください、、、コソコソ、、、ブランケットは胸だけにかけますか、足まで覆いますかコソコソ、、、」施術の準備が終わると、頭を押す強さを確認する。
「強さどうですか、、、コソコソ、、、、」
「それくらいでいいです、、、コソコソ」
そのうちに施術が始まり、頭皮をウニーーーっと引き上げたり、首の後ろを押したりする。確かにツボ押しではない。あーそこそこ!という感じも少ない。とにかく押されている。では気持ち良くないかというと、気持ちいい。これが研究の成果、、、!もちろん、人の手で人の体を触り、再現性のある結果を生むのだから科学的な機序があるのだろうが、筋肉がほぐされて血行が良くなって体が軽く感じる!という身体的な作用よりも、もっと精神的な作用があるように感じた。セラピストさんたちの柔和な対応、受付で流れるバックグラウンドストーリー、スペースマウンテン、、、そういった数々の舞台装置が、最後の施術を高みへ押し上げているような。いや、誰でもできることをやっているというつもりはない。この施術はスタンダードコースで65分。1時間の間、他人の頭を揉み続けるのは簡単ではない。だが最初の説明にあったように、そもそもコリをほぐすことを目的とはしていない施術なのだ。
俺は、他人に体を触ってもらうことそれ自体の意味みたいなものを考えた。傷に絆創膏を貼ったりして処置をするのを『手当てをする』というが、歴史を遡ると、本当に手を当てることを治療とする考えがあった。人類は手を器用に使うことで脳が発達し、今日の繁栄を築いたとも言われる(迂闊な言説)。かめはめ波も手から出すし、キリスト教でも手をかざすことは重要な意味を持つ。とにかく手はスピリチュアルな装置で、手を触れることそれ自体が精神へ作用する、と思っている。小難しく書いたが、例えば手を握られると安心したり、相手によっては不快だったりするという機能の話をしている。コリをほぐすという目的があると、触るという手段自体は評価されなくなる。知らないおっさんだろうと、目的を達成するためには触れてもいいことになる。だが悟空のきもちの場合は、触れること自体が目的化しているような気がする。筋膜をほぐすとかなんとか言っているが、セラピーの型をとって、"触れること"の癒しを提供しているんじゃないか、そう感じました。とか言いながら、めちゃくちゃ論理的に的確に科学的にマッサージしてたらウケるね。ちなみにちゃんと寝ましたわたし。「いやーこれでは寝なくない?」と思ってたけど、段々と自身の輪郭がぼやけていく。からだが液体となって世界に溶け出すようなまどろみがやってきて、気付くと施術終了を告げられた。帰りのエレベーターは1人で降りる。寝ぼけ眼で待合室に通され、お姉さんがまた来てくれて、アンケートを書いてさようなら。また行きます。