La oss lage en snømann

昨日は晴れ。相変わらず日中はあつい。おはよう、雪だるまつく郎です。

アナ雪はいいよなぁ。曲もBGMもいいし、ヴィランがちゃんと悪役しててさ、いいよなぁ。ディズニーで一番好きな作品かもしれない。それにはいくつか理由があり、俺が北欧テイストの音楽やデザインが好きなこともあるが、安易なラブロマンスをメタ的に批判してること(これはかなり意識されている)、アナとエルサがふたりとも他者との通行機能不全に陥っていること、クリストフの脅威的な非モテ具合(前述のラブロマンス批判に加え、勇敢なプリンス像へのカウンターでもある)、ラストの、アナのお株をうばう明るいエルサ、、、などなど。

アナ雪は商業的にもディズニーの中でも特異な位置にいる作品で、アナとエルサは他のプリンセス、シンデレラや白雪姫など、と横並びで登場することはほとんどない。それはグッズなどでもそうだし、ディズニーパークのパレードなどでもそうだ。さらに踏み込んだ話をすると、一般企業がディズニーのグッズを作るためにはディズニー社とライセンス契約を結ぶ必要があるのだが、アナ雪のグッズを作るためには追加の契約が必要で、ビジネス的にも他やディズニーキャラと一線を画した扱いがされている。この理由は、ひとえに「アナ雪ってばめちゃくちゃ売れたし、追加で金取ってもいけるだろ」というシンプル(かつアコギ)な戦略に他ならないのだが、やはり昨今言われるポリコレ的な流れ、特にディズニーについては、ディズニー自身の贖罪という重大な役目を担うことになったことがアナ雪の特異性を担保していることは無視できない。俺がアナ雪を好きな理由そのものとはあまり関係がないので軽く触れるに留まるが、ディズニーは、自身が過去の作品を通じて作り上げてしまった封建的な女性観と白人至上主義に対するアンチテーゼを必要としている。このことは、当ブログのトイストーリー4の記事でいちど書いているので参照されたい。

俺が指摘するまでもなく、アナとエルサは、プリンス("強く勇敢な男性")を必要としないプリンセス像であり、自らの意志と行動で物語を進めていく。また、これまでの作品の登場人物のように「台詞=内面」という単純な描写にはなっていない。エルサは、家族を避け、妹を避け、国民を避けるがそれは恐れであると同時に彼女自身の強烈な愛の裏返しだ。わたしが他者を傷つける、わたしがいないことが他者の幸せ。対してアナの、その底抜けな明るさと物怖じしない態度、猪突猛進な精神描写は、アリエルやラプンツェル的な闊達なプリンセス像を提示しつつもその実、相手を慮ること(≒他人への疑念、他者への恐怖でもあるが)を怠る未熟さも表している。わたしが他者を救う。わたしがいることが他者の幸せ。そんな2人がうまくいくわけはない。お互いがお互いの無理解を抱えたまますれ違っていく。しかし、最後には、オラフに諭され他者と関わることの意味に気付いたアナが"真実の愛"に目覚めることで、エルサも同様に愛を理解し、姉妹は和解する。俺がアナ雪が好きなのは(何度も言うが曲がいいからだけど)、アナとエルサという姉妹が、"他者"への扱いについてまるっきり逆さまな捉え方をしている点と、その二人が同じだけ歩み寄り、相互理解を成し遂げるという、「"わたし"と"あなた"の対決と和解」というテーマを持っているからだ。些かご都合主義というか、姉妹愛というのを誇大なものにしすぎている(同性愛論が出てくるほどに)気がしないではないが、それでも、これまでディズニーで語られてきた"愛"を、"性"ではなく"思慮"へとスライドさせた成果を愛している。

アナ雪1の後日談である短編、『エルサのサプライズ』と『家族の思い出』もぜひ見てほしい。前者では、アナへの愛を躊躇しなくなったエルサが、その溢れんばかりの愛情と女王としての権力、富をフル動員し、彼女の全てを賭けて、彼女の全てあるアナを祝おうとする狂気的な一面が見られて大変素晴らしいし、後者では、両親を早くに亡くした2人が、新たな家族、新たな国、新たな伝統をつくるために奮闘し、感動的なラストを迎える。特に『家族の思い出』は、『リメンバーミー』と同時上映だったのだが、『リメンバーミー』が始まる前に体の水分がなくなるほど泣いてしまって、この記事を書きながらも曲をきいて涙をこらえている。

 

さて、そんなアナ雪だが、批判がないわけではない。何が批判されたかは、アナ雪2を見ればわかる。アナ雪2は、元々構想されていたものではない。アナ雪は1で完結していたはずだが、外的、内的な要請に応じて製作されたもので、過去のプリンセス像の超克と"愛"という概念の書き換えをやり遂げた姉妹に、さらに大きな贖罪の役目が課されることになる。あれだけブームになったアナ雪1をさらに乗り越えるためにつくられたのが2だ。ぶっちゃけ賛否あると思うのだが、映画そのものは見れば感動するししっかり満足してしまうものだ。来週のアナ雪2、まだ見てない人は楽しみにしていてほしい。