初心者のためのメンズファッション

自信をもって何かを言えるというのはいいことだ。頓珍漢なことだろうとなんだろうと、自信があることそれ自体はいいことだ。


ところで俺は洋服が好きだ。これは自信をもって言えるし、だから、同好の士が増えると嬉しいし、ファッションの喜びを知って欲しいと思っている!

悲しいかな、世の男性諸氏はファッションに関心のあるものはあまり多くはないようだ・・・俺はとても悲しい。みんなもっとファッションを知って欲しい!


なぜ洋服に無関心でいるのか。「高い」「なんか難しそう」「洋服屋のハードルが高い」など理由はさまざまだけど、
お金なんかは5万も6万もかかるわけではないし、中高生でもなければなんとかなるので、大事なのは「何を買うべきか知ること」である。


少し検索をかけると、これから洋服にも気を遣ってみよう!というような男性諸氏のために様々なウェブページが用意されていることがわかる。
用語の解説や、コーディネートのポイント、どんなお店で買ったらいいかなどなど。

しかし、その多くは欺瞞であり、望むべき成果も得られないようなものばかりなのだ。
有用なサイトもあるが、有用であるが故に読み応えもあり、それなりの意欲をもって臨まないと途中で読むのをやめてしまいそうでもったいない。

そこで、俺が考える「カジュアルファッションはここから始めよう」を書いてみる次第なのだ。





洋服の画像と、その特徴を交えて紹介するけれど、その前に少し前置きをさせてほしい、これから紹介する洋服を選んだ基準について。


ファッションに正解はないとはいえ、大外れを避ける方法や、大まかな傾向といったものは確かに存在する。
メンズファッションは、レディースとは根本的に考え方が違う。


大まかにいって、メンズファッションは三つの文化的要素で成り立っている。

『ワーク(労働着)』と『ミリタリー(軍服)』と『スポーツ』だ。この三要素の混在と、少しのトレンド要素でメンズカジュアルは成り立っている。
これらの文化にちゃんと根ざした、あるいは敬意を払ったカジュアルウェアを選び、着るだけで、メンズカジュアルの基本ができあがる、と考えている。

それは、その服がどんな目的をもってデザインされ、どのようであるべきかという歴史に気を配るということだ。
だから、今回紹介したいのはどれも定番のもので、それゆえに初心者がなかなか目に触れない洋服たち。
そして、トータルでコーディネートしても外れないように選んだので、全部買って合わせて変になるということはないと思う。

もう一つ。これから紹介する洋服は、ファストファッションのそれに比べるとやや高く感じるかもしれない。しかしこれは市場規模からいって仕方のないことなのだ。分母が違うのだから、どうしたって男性の洋服は高くなる。それでもかなり買いやすい値段のものを選んだつもりなのだ。これを読んだ君が買うことで、もっと安く提供できるようになるかもしれないぞ。






リーバイス 511クラシック リンスカラー
¥11800

まずはジーンズを二つ紹介する。

だいたいの場合は、一着の洋服で下半身すべてを覆うことになるのだから、ズボン選びは慎重でなければならない。
ジーンズを初めてつくったのがこの、Levi's(リーバイス)という会社だ。
511クラシックというのはこのズボンのモデル名で、リンスカラーというのは色落ちのない、濃い紺色の状態を指している。

このジーンズの特徴は、大腿まわりが少し細くなっており、裾にかけて綺麗に形がつくられている点。
普遍性、という観点から言えば少し現代的すぎるのだけれど、昨今の細身なファッションのブームを無視するのは懐古主義すぎる。

体に張り付くような、いわゆるスキニーシルエットには抵抗のある人もいるだろうし、だれにでも似合うものではない。
しかしこの511というズボンは、細身でありながら、裾が絞られすぎていないので、上半身を必要以上に大きく見せることなく、非常にバランスのとりやすいズボンになっている。本国アメリカでも大ブームである。

色は黒もオススメだけど、まずはこのインディゴ(藍)染めのものを持っておくと万能に使えるだろう。




リーバイス 505クラシック リンスカラー
¥11800

もう一つのジーンズは、同じくリーバイスから505。511に比べてこちらの505というモデルはやや太い。太いといっても鳶職のそれのようなものではなく、いわば、ジーンズ本来の太さを保っている。しかしこの505はただ太いだけではなく、裾に向かってほんの少しだけ細くなった形になっている。
これによって、どんな靴とも相性がよく、上半身とのメリハリがつけやすくなるのだ。
511のような細身のデニムは少し苦手だ、体型の都合で余裕があったほうがいいという人にはこちらがおすすめ。





ディッキーズ WD874
¥7020

ジーンズときたら次はチノパンだ。チノパンはいろいろな選び方があるけれど、「ワーク」に敬意を払うならやはりディッキーズだろう。
チノパン自体は実はミリタリーウェアなのだが、ミリタリーのチノパンはいささか扱いにくいため、ワークへ寄せた。
素材はポリエステル65%コットン35%。とても丈夫で、洗っても洗ってもへこたれない。

ディッキーズの定番モデルは「874」というズボンなのだけど、これはその「874」を少しだけ細く、腰回りもきつめの着用感へ変更したもの。
定番のものもいいのだけど、あまりにコテコテになりすぎて使いにくいこともあるので、少し現代風にアレンジされたこのモデルがよく働いてくれると思う。
色は、黒や、アーミーチノ(ベージュ)が着回しがきく。





US ARMY ファティーグシャツ
¥4000〜5000

通販できるものについてはタイトルにハイパーリンクを貼っているけれど、基本的に洋服は試着をせずに買うことはオススメしない。
どんな洋服も、着て他人へ見せるわけなのだし、細かなサイズバランスやフィット感は試着しないではわからないからだ。
ところでこのミリタリーもののシャツは通販ができない。古着だからだ。古着通販サイトも一応は存在するが、こればっかりは自分の足で古着屋へ赴いてほしいと思う。
東京の、とは言わない。地方の古着屋でもこういったミリタリーシャツくらいは取り揃えているはずである。

多くのカジュアルブランドのみならず、ユニクロしまむらなどの量販店もモチーフにしている、メンズカジュアルの基本的なトップスの一つがこのファティーグ(作業用)シャツだ。
アメリカ陸軍の作業着であり、それ以上でもそれ以下でもない。我々が着る前は軍人が着ていたのだ。前の持ち主によってワッペンなどのカスタムなどがされているものもあるし、何もついて無い無地のものもある。好みのほうを選べばよい。ミリタリーウェアをカジュアルに持ち込んだのはジョン・レノンロバート・デニーロなのだけど、ともかくかっこいい。カラーバリエーションはほとんどなく、もっぱらこうした深緑色(オリーブグリーン)なのだけど、この色はデニムの紺色や青色、チノパンの黒などとも相性がよく、生地も丈夫かつ薄手なので様々な場面で活躍してくれるだろう。アイロンなんかかけなくてもよく、ガンガン洗ってグシャグシャとバッグにいれておけばOKなのだ。一着もっておくと便利である。





カムコ シャンブレーシャツ
¥7000〜8000

シャンブレーシャツもメンズカジュアルの定番アイテムだ。これも元はというとアメリカ海軍の作業着だったと言われている。青く染めた糸と白い糸を使っておられた生地は丈夫で軽く、使う内に色が抜けて風合いが増す。カジュアルであればほとんどのズボンと相性がよく、コートなどを着てもよく映える。一着持っておきたいシャツ。様々なブランドからつくられているが、比較的安価でかつ質実剛健なつくり、懐古主義すぎない形などを考えると、このカムコのものがよさそうだ。このブランドはチェックのネルシャツも評判がよく、アメカジ界では名のあるブランド。





ブルックスブラザーズ ボタンダウンシャツ
¥12960

襟にボタンがついたシャツのデザインをボタンダウン、あるいはポロカラーと呼ぶ。馬に乗って玉を打ち合うポロというスポーツをする際、襟が風になびくのを防ぐためにデザインされた。これは今や当たり前の意匠なのだが、初めてつくったのがこのブルックスブラザーズであり、メンズファッションの一つの”極”をなしていると言っていい。
ところでワイシャツというのはそもそもは現代の下着に近い立ち位置だった。いまわれわれがTシャツと読んでいるものは軍服がルーツであり、市井の人々は素肌にYシャツを着ていたようである。
だから、Yシャツは着丈が長い。本来はズボンの外に出して着るものではないからだ。それがシャツの「あるべき姿」である。Tシャツが普及し、シャツが下着からカジュアルウェアへ変遷する過程で、ズボンの外に出したり、ボタンを開けて着てもおかしくないように着丈が短く改良されていったという歴史がある。
今回オススメするこの白いシャツは、古き良きシャツの姿を現代に伝えるものであり、ジーンズなどの外に出して着ると少し野暮ったく見えるかもしれない。しかし、その野暮ったさこそがカジュアルのかっこよさの肝要である。堂々と裾を外に出して着てほしい。写真は古着屋の店員さんで、裾はしまってるけど、洋服の歴史に真っ向から戦いを挑んでる感じがする。
メンズファッション基本のき、白シャツ、ぜひ一着。





キャンバー アークティックサーマル グレー
¥10300

スウェットパーカーは派閥がある。端的に言って厚手派と薄手派だ。俺は厚手派なのでこれをおすすめする。おそらく市場にでているスウェットパーカのなかでトップクラスの生地の厚さである。洗ってもへこたれず、TシャツやYシャツに羽織るだけでスタイルが完成する。また裏地にサーマルが貼られてるのでかなりあったかい。パーカーを一着選べ、と言われれば俺はまよわずこれを選ぶ。サイズが大きいので180cm前後でなければSサイズでいいだろう。色はグレーがいいと思う。いままで紹介した洋服とも合わせやすい。





ジチピ コットンカシミアカーディガン
¥9504

カーディガンもさまざまなタイプがあるけれど、使いやすくかつコストパフォーマンスのいいのがこのジチピだろう。コットンカシミアでタイトなシルエット、カジュアルにもフォーマルにも使えるデザインで汎用性がたかい。色はブラックがよく、サイズはなるべくタイトな方がいいだろう。シャツはもちろん、ふらっと出かける時にTシャツに羽織ってもいい。





フィデリティ CPOジャケット
¥20520

冬のアウターは選ぶのが難しいが、とりあえずこのウールの上着をおすすめする。このCPOジャケットはアメリカ海軍の防寒着が発祥。肉厚なウール生地の防寒性は抜群で、ネイビーの色味も深く、黒に近いニュアンスで使える。ダークトーンでコーディネートすると地味になりがちだが、このジャケットは素材感が強いので、最初に紹介したズボンと合わせても地味になりすぎない。中に着こんでもよい。色はたくさんあるけど黒かネイビーがいいだろう。






ノースフェイス マウンテンパーサロフトジャケット
¥24840

高い!と思ったかもしれない。実際高い。これはダウンジャケットでもレザージャケットでもなく、フリースだ。ユニクロで10分の1の価格で買えるあのフリース。
しかし!これは本当に素晴らしい。アウトドアの高級ブランド、ノースフェイスのパフォーマンスがぞんぶんに堪能できる。体にフィットするシルエットと上等な素材は着ているとそれだけで体がポカポカしてくる。アウトドアの流儀では、一番上にナイロンの防風性のあるアウターを着て、その下に保温性のあるフリースを着る。それにならって、たとえば上のウールジャケットの下にこのフリースを着ると、かなりの寒さにも耐えられると思う。
確かに高い。簡単には手が出ないかもしれないが、いままで買った洋服で、金を積んだ甲斐があったとはっきり思えた洋服の一つ。





ヘインズ ジャパンフィット VネックTシャツ
¥2484

Tシャツの定番ブランド、というのは沢山あるけれど、ヘインズはその中でも最も有名かもしれない。
もともとはアメリカのブランドで、アメリカ人の体格に合わせてつくっているのでとても大きいTシャツだった。
それが今年、ジャパンフィットの名のもとに、日本人の体格に合う形に作り直された。
着丈や身幅を小さくし、一回洗いをかけることで風合いよく仕上げた。
クルーネックやUネックもあるけれど、Vネックはシャツのインナーでも1枚で着てもサマになりやすいので、これをおすすめする。
これはパック入りで販売されているので試着ができない。
サイズは、175cm75kgややがっしりめの俺でLサイズなので、だいたいの人はMサイズ、背の低めなひとはSサイズがいいだろう。
夏以外のインナーはすべてこれでいいだろう。





セントジェームズ ピリアック
¥6000〜7000

在庫がそろってる通販サイトが見つからなったのでリンクはなし。セントジェームズの公式通販を貼っておく。http://www.shop-st-james.jp/index.html

柄ものの洋服で数少ない、普遍的なカジュアルウェアの地位を確立しているセントジェームズ。長そでで厚手のコットンでつくられたウェッソンが有名だが、薄手の半袖のこのピリアックというモデルも見逃せない。夏場、無地のTシャツでは物足りない、透けるのはいやだという場合はこのボーダーTシャツを着てほしい。シャツのインナーにも使えるので、ミリタリーウェアの中に仕込んで洒落ものを気取ってもいいだろう。広めにあいた首元やボーダーの間隔は唯一無二。いくら模倣品が出ても、このオリジナルのバランスは独特のかっこよさがある。


最後に靴を二種類。





コンバース オールスターJ ナチュラル
¥10800

一足目はスニーカー。やはりコンバースオールスターは定番中の定番である。今回選んだのは、ただのオールスターではなく、日本で生産された、オールスターJというモデル。普通の5000円くらいのオールスターより形が少し細身になっており、周りに差をつけられる。また、このナチュラルというカラーは何気にこの日本製のモデルにしかないカラーバリエーションで、デニムとの相性が抜群。同系色のズボンとも相性がよく、コーディネートをグレードアップしてくれる。少し高いが、いつまで生産されるものなのかわからないので、あるうちに買っておくことを強くおすすめする。





ダナー マナワ
¥31320

高い上になかなか手に入らないのだけど、アマゾンにあるくらいだから大丈夫だろう。
ダナーはもともと登山靴で有名になったのだけど、こういうトラッドな革靴もつくっている。
このマナワはあまり有名なモデルではないのだけど、丸みを帯びたシルエット、やや厚めなソールでどんな格好にも合う。
似ている靴ではレッドウィングのベックマンがあるが、ローカットでこういう形のものは、実はありそうでなかなか見つからない。
本格的なレザーシューズとしては決して高くないので、ぜひ一足手にしてほしい。俺は茶色を持ってるけれど、今回紹介した洋服には黒を買っておくと都合がいいと思う。



今回は以上だ。
トータルでコーディネートできるラインナップなので、これをそろえてもらうだけで、無難かつ、周りより一つ頭ぬけたワードローブが出来ると思う。
レッツファッション!