ハーモニーインカラー

晴れ。梅雨明けしてくれ〜〜。こんばんは、ホン・ウンチェです。

去る4月15日から、東京ディズニーリゾートは開園40周年を迎え、アニバーサリーイベントの"ドリームゴーラウンド"がスタートしている。そのメインとなるのは、ディズニーランドで公演される昼のパレード"ハーモニーインカラー"(以下ハモカラ)だ。東京ディズニーリゾートでは各パークが5年ごとにアニバーサリーイベントをやっているのだが、ディズニーランドの昼のパレードは、アニバーサリーを迎える毎、向こう5年間同じパレードが公演される。去年までは、35周年記念として始まった"ドリーミングアップ"(以下ドリミ)、その前は30周年の"ハピネスイズヒア"(以下ハピネス)、さらにその前は25周年の"ジュビレーション"が公演されていた。周年のパレードというのは5年間やると決めて作られているから、高い満足感を求められ、オリエンタルランドも気合を入れて企画する。なにせ365×5=1825回も公演するのである。

今回、ハモカラではこれまでのパレードと大きく変わった点がいくつか見受けられたため、そこについての感想を書いていきたい。

 

①曲調

過去10年の二つのパレード、ドリミとハピネスはどちらも女声ボーカルがメインで、シンセサイザーや弦楽器、オーケストラ調のサウンドで構成されたファンタジックなメロディが特徴だった。ハモカラはなんと男声ボーカル。イントロだけはメルヘンなサウンドがあるものの、いざ始まると小気味のいいドラムとギターのカッティングがメインとなり、音のレイヤーは多くない。これまでの、幻想の世界で飛翔していくようなメロディラインではなく、地に足をつけた陽気さを感じる。ディズニーが物語の焦点を、幻想的なおとぎ話から、現実世界へ移そうとしている意思を感じる。

 

②プリンセスフロート

プリンセスはディズニーにおいて非常に重要かつセンシティブな立ち位置にある。ディズニーが今日のように極端なポリコレ贔屓になったのはプリンセスたちの存在が大きい。美しく、純粋で、か弱い、男に庇護される存在としてのプリンセスは、ある時は憧れであったが、今日では批判の対象にもなっている。かつてのプリンセスたちを担ぎ上げ続けることは過去の女性観に縛られ続けることを意味するかもしれない。それを反映したのか否か、ハモカラでフロートに乗っているのは、ラプンツェル、モアナ、ポカホンタス(!)の3名である。ラプンツェルは、プリンセスでありながら現代的な好奇心や勇敢さを備えており、同時にわかりやすいシンデレラストーリーに乗っかっている、非常にバランスの良いキャラクターで、人気も非常に高く、ドリミやハピネス、夜のパレードでもフロート入りしていたから続投はわかる。モアナは比較的新しいプリンセスで、シーの夜のショー"ビリーヴ!"にも登場していた。有色人種かつオリジナルストーリーのプリンセスなのでこの抜擢は理解できる。しかしポカホンタスとは!ポカホンタスは1994年に公開された映画だが、別に実写化されたりはしていない。興行成績もそこまでで、国内人気も特になく、パーク内にグッズも売ってない。にも関わらずいきなりフロートに乗るというのは違和感がある。白人プリンセスだけじゃないですよ、というディズニー社への目配せだろうか。そして歴代のプリンセスはみんな徒歩になっている。ドリミや夜のパレードでは専用フロートを与えられたベルまでも!これはけっこう衝撃だった。

 

③その他出演作品のチョイス

モカラでは、東京ディズニーリゾート初登場となる作品が多数ある。ズートピアはこれまで、シーズンパレードで登場していたが、レギュラーメンバーに出世した(ちなみにズートピアは、ランド内で公演されている"ミッキーのマジカルミュージックワールド"や"クラブマウスビート"にも登場しており大忙しである)。次にカールじいさんと空飛ぶ家のフロート。カールじいさん自体は、シーで行われていたピクサー作品を集めたショーには登場していたが、デイパレードで巨大なフロートでのレギュラー化となった。さらに前述のモアナやポカホンタスに次ぎ、リメンバーミーが来る。リメンバーミーもモアナと同様に"ビリーヴ!"に登場しており、最近のディズニーのお気に入りなのかもしれない。次に来るのはミスターインクレディブル。彼らもまた、シーのショーからの出世だ。その後にトイストーリーとシュガーラッシュが、ゴーカートみたいなフロートで登場する。シュガーラッシュは舞浜初登場だ。そしてベイマックス。前回のドリミではパワードスーツをつけた状態だったが、ハモカラでは通常状態。最後にミッキーたちがやってくる。選ばれた作品には、昔からの人気作品もあるが、比較的最近の作品のほうが目立つ。これは一言でいえば、「いまの子供たちが見ている作品」を選んだのだろう。おじさんおばさんのディズニーファンは夜のパレードもあるし、いつまでもシンデレラだけにお手振りさせても、子供たちはピクサー作品が好きなのだ。

 

④ミッキーたちについて

モカラでは、ミッキー、ミニー、ドナルド、デイジーグーフィー、プルート、チップ、デールの8キャラが1台のフロートに乗ってやってくる。数々の作品を並べた後の大トリにやってくるのだから特別扱いだ、という向きもあるが、ドリミやハピネスでは各キャラが一台フロートにのっていたし、各作品のフロートの間に出番が差し込まれていた。俺は、ディズニーパークのショーやパレードは「物語の織り物」だと思っている。いろんなディズニー作品が縦糸で、ミッキーやドナルドたちが横糸となり、バラバラの作品を繋ぎ合わせ、新たな物語を織り上げていく、それがディズニーのショーやパレードの醍醐味だと感じている。が、ハモカラでは、ミッキーたちはみんな1番お尻にまとめられた。クララベルやピノキオなどの往年のスターもみんな最後尾、徒歩である。これは「脱ミッキー」ないし「ミッキーの力の衰退」を示しているように思う。おじさんおばさんのディズニーファンはみんなミッキーやミニーを性的な目で見ているのだが、最近の若い子はそんなにミッキーが好きじゃないのかもしれない。"ビリーヴ!"も、ミッキーたちは最後に急に出てきただけで、ショー全体を統括するような出方ではなかった。作品を順番に紹介して、オチのようにミッキーたちが出る。これが"ビリーヴ!"とハモカラに共通の構成だ。もはやミッキーたちは横糸ではなく縦糸になりつつあるのかもしれない。おじさんとしては寂しい気持ちもあるが、時代の流れなのかもしれない。ミッキーなんてディズニーパーク以外で見たことないんじゃないのかみんな。『大演奏会』とか『魔法使いの弟子』とか見たことないのかもしれない。

 

まとめ

モカラは、幻想、ファンタジー、お姫様と王子様といったこれまでのディズニーから少し距離を置き、わたしたちの生きるこの現実世界を、手を叩いて祝福するパレードなのだと思う。"リビングインカラー(living in color)"と題されたテーマ曲は、我々それぞれのcolorを歓迎すると宣言する。まあ、、、フロートとかがちょっとしょぼく感じるのはオリエンタルランドの苦しい懐事情もあるだろうから目を瞑るとして、ちゃんと旧来のファンも取りこぼさないようにする優しさも見られる新しいディズニーリゾートを喜ばしく思うわたしである。