『悪の教典〜序章〜』

悪の教典』ではない。私は『悪の教典』のつもりで借りてきたのだが、これはBeeTVで配信されていた『悪の教典』をもとにしたオリジナルドラマ、『悪の教典〜序章〜』全4話をまとめたものである。

ネタバレ有なので、このスピンオフを見る予定の人は要注意である。尚、俺は映画版は見ていない。





このスピンオフドラマは、映画版で描かれるクラス全員皆殺しの4ヶ月前、伊藤英明演じる蓮実が高校へ赴任する以前に働いていた証券会社での様子と、赴任した高校での行動がパラレルに描かれる。赴任先の方では、中越典子演じる、カウンセリング担当の水落が中心となって物語が進んでいく。


異常な教師が生徒に対して凶行に及ぶというテーマは、『告白』の成功体験があるためとても関心がある題材だ。だが、これはダメだ。ぜんぜんダメ。


事なかれ主義の校長、フェミ気味でヒスる国語教師、脳筋の体育教師、教師をナメた学級崩壊など、まぁありがちな設定はいいとしても、『悪の教典』自体が既にクラス全員皆殺しというシーンを見に来る映画だというのに、聖人蓮実の裏の顔だとか、一見あやしげな物理教師の釣井といった人物の物語での役どころなんかを出し惜しみしてもしょうがないではないか。みんな分かってるのだ。予告編にみんな映ってるんだから。分かってるんだよ!初めから!みんな!伊藤英明が悪者で誰か殺すんだろってことくらい!


それをなんだもったいぶって、清純気取った中越典子高岡早紀演じるアバズレ保険教師に昼ドラみたいなことさせたり、海外での、なんのトリックも伏線もない殺人を描いてみたり。


釣井の過去を描いて、前半の水落への執着接続させることでなんとか物語は厚みを得ているが、物理教師の家だというのに、用意してあったのか、すんなりバールが出てくるだとか、筋肉なさそうなのにフラフラとバールを振り下ろして人を殺せるのか(そこは物理教師なのでキチンと計算しているのかもしれないゾ)とかツッコミどころがある。また、蓼沼とかいうヤンチャ少年(彼は映画版にも出てくるようだが)も、特に伏線もなく、ただの時間稼ぎボーイにとどまっている。シーンによって照明のコントラストをハッキリとつけて叙情性を高める演出も、全体を見れば、リアリティ重視か表現重視かがどっちつかずになっているためそれほど印象に残らない・・・といった具合で、どうにも楽しみきれない。ラストで、遂に蓮実に殺されてしまった水落(中越)が、「彼に殺されたのは私だけじゃないだろう」などと黄泉の国から嘆くのはお笑いの域である。


何より気に入らないのは、途中々々に挿入されるエグザイルの曲だ!元は30分かそこらの尺で、それを一本につなげずに次回予告を挟んでいるために、視聴者は計3回、エグザイルのしょーもない曲を聴かされることになる。90分とか120分とかって用意で見るとすればこれは大変な興ざめだ。ぶちきれそうになった。


どうやら映画本編もエグザイルが主題歌ということで頭を抱えているのだが、しかしせっかくなので、本編がでたら借りて見ようと思う。「面白くなかったんちゃうんか」と思うかもしれないが、俺はそもそも『悪の教典』がみたかったのだ。こんなスピンオフドラマではない。むしろ、恨みはらさでおくべきか、といった勢いなのである。皆殺しの流れは是非みたいしね。

あと中越典子かわいかった。