クレームとわたし、他人、思いやりの演繹と帰納

晴れ。さむすぎないな〜〜〜こんばんは、本郷柚巴です。

年明けからいろんなことが起こっている。ことの大小は様々だが、身につまされる話としてふたつ挙げたい。

ひとつはレゴランドの炎上。中身を掘りたいわけではないから引用とかはしないけど、どうやら年間パスポートに関わるシステム的な問題で、あるゲストの入園に時間がかかった。それはレゴランド側のミスだったことがわかった。40分ほど待ちぼうけをくらったのに、スタッフたちからの謝罪は一切なし。この件を当事者のゲストがTwitterへ投稿。それをうけてレゴランドの社長もTwitterで反応&このゲストへDM送信&そのDMの内容も公開。既にやばそうな雰囲気が出ているが、このDMというのも内容がよくなかった。ゲストのクレームを"問題提起"と表現、"コールセンターから話をさせてほしい"、"レゴランドのスタッフの99%はいい人だからチャンスが欲しい"と謎の釈明で絶賛大炎上。おまけにこれをツイ消ししたために余計な火種も生んでいる。詳しいことはTwitter見ればすぐ出てくるからあとは自分で調べて。

もうひとつは、つい先日に発生したしまむらの問題。プチプラコーデインフルエンサーみたいな女の子としまむらがコラボしたタイツや靴下の福袋?的な商品が、12月中旬に発売予定だったのだが、延期に延期を重ねてようやく発売となった。ところが届いた商品は様々な不良がみられた。デニールが表記とちがうというのが主な内容なようだが、ディテールが少しちがう、セットの靴下の色が違うなども報告されているようで、全容の把握には至っていない。結果、この福袋は途中で販売中止になったらしく、予約していた人?にも届かなかった。本件について、しまむらの公式サイトに文書がアップされたようだが、これを書いている1/19の時点では見つけられなかった。当事者のインフルエンサーは(俺から見ると)それなりに対応していたと思うが、当のしまむらの対応を含めてあまり好意的には受け止められていないようだ。

両事例とも、発端となったトラブルもまあまあでかいが、その後の対応でさらに大きく燃え広がってしまった感がある。クレームは起こさないに越したことはないが、起きる時は起きる。とにかく初動の対応が命だとよく語られる。まるで災害のようだ。とにかく「相手が何に怒っており、何を求めているのか」を迅速に察知、どのように対応するかを説明、その先の不安要素を全て潰しにかかり、逐次の報告と謝罪。これに尽きる、と俺は習った。小売業の最下層で沈殿物を食べて生きている深海のカニのような俺でさえ知っていることを、天下のレゴランドしまむらが知らないわけがない。当然"そうした"はずだ。なのにこうなってしまう。それだけクレーム対応っていうのは難しいんだなあと感じる。レゴランドの件については「日本式の謝罪ではない。外資とかベンチャーにありがちな思考と文章だ。」という指摘がみられた。とにかく日本は平身低頭で謝り続けるスタイルが好まれる。ほとんどの場合、謝っても何も解決しないが、謝ること以外は何もできない場合もあるし、多くの場合、客は損害に怒っている以上に、不快にさせられたことに怒っている。損害は補填できるにしても、不快な過去は補填できないから、謝り続けるしかない、みたいな対応になる。俺は海外で暮らしたことないからわからないが、確かに欧米人がアイムソーリーって謝り続けてるのはイメージがわかない。さらっと「これから頑張るわ!」的なメッセージ流して終わりみたいなイメージがある。しまむらの件については、会社の規模やことの大きさの割にこぢんまりとした対応だったなという印象がある。有名人を巻き込んだ大規模な不良が起こると、SNS上や公式サイトのわかりやすいところに声明を固定しておくイメージがあるが、それをやっているのはインフルエンサーのほうで、しまむらの方は沈黙に近い対応にみえる(繰り返すが、ネットニュースとかには公式サイトに謝罪文が掲載されたと記載があるからいちどは掲げたのだろうけど、俺は見つけられなかった。見つけたら教えてください)。販売中止になったから無断で予約をキャンセル、もう買ってしまって返金希望ならお店に来てね、みたいな対応が身勝手だという意見もあったが、実務的にはそうするしかないだろうという気もする。インフルエンサーの子は「生産・販売には関わっていない」とコメントしてやや批判を浴びているが、いちインフルエンサーが、日本全国に展開する企業の商品生産や販売にまで口を出せるわけがないので、このコメントは責任逃れというか全くの事実で、本件についてインフルエンサー側の責任はほぼない気がする。ただ、もしかしたら、彼女のファンに対しては一抹の責任は生まれてしまうかもしれない。どんな経緯だろうと、客は彼女の名前に金を払ったのだから、彼女に説明を求めるだろうし、そこへのフォローはしないといけないのかもしれない。名前を貸すってこわいね。

かく言う俺も年末年始はクレーム対応に追われていた。販売した商品が不良だったのだが、年末年始の休みを差し引いても俺の対応が杜撰で延焼してしまい、年明けからかなり厳しいメンタルで過ごしていた。弊社からは、「不良品を100%防ぐというのは難しいかもしれないが、その後の対応は誤ってはいけない」と強く叱られた。ついでに「お前には他人を慮る意識がない」とも言われたのだが、まあそれは32年間言われてるのでそうかもしれない。この他人を慮るというのは大変だ。クレームをあげた客も、結局自分がどうして欲しいのかわからないままクレームをあげていることが多い気がする。こうして欲しいというのが明確だったらそれを伝えるが、"ただ怒っている"相手とか、"言っていることとやってほしいことが異なっている"相手に対応するのはすごく難しく感じる。これは俺の共感性の低さ故なのだが、「自分はあまり気にならないことなのに、この人は何で怒ってるんだろう」と思う時がかなりある。待ち合わせに遅刻する人は、だいたい他人の遅刻にも寛容だ。思いやりがある人ほど他人のそれにも厳しいというのはいつも感じるところで、そのポイントは様々だが、俺の中の"気になるツボ"は、世の多くの人と異なるのかもしれない。良いことか悪いことかわからないが、思い返す限り、俺はクレームをつけた事はいちどもない。スマホを機種変した時に初期不良があり、どうしても対応してほしくてゴネたことは一度だけある。それは俺としてはちっとも怒ってなくて、ただスマホが使えないと非常にまずかったので申し訳ないながらゴネさせてもらった、というだけで、対応してもらったら逆に謝って帰ってきた。買った商品がボンクラだったこともあるが、まあちゃんと高いものを買わなかった自分もミスだな、と思うようにしている。翻すと、金に対するリテラシーみたいなものが低いのかもしれないが、それ以上に他人と衝突することがストレスだからだ。同じ小売業・サービス業として、向こうも向こうの事情があるのはよくわかるし。クレームは、発するのも体力がいるし、対応する方もかなりのコストがかかる。その結果として手に入るのは"元通り"なのだから、双方にとって全く生産性がない仕事だ。だから、不良品とかそういうので怒る、という感覚がイマイチ掴めず、謝らせたい!という気持ちもわからない。時間とエネルギーの無駄だと思ってしまう。だから対応を間違えてしまうのだろう。社会が上手な人はこうした共感のチューニングが上手だと感じる。相手が気になることを察知できる。弊社の人間は「意識の問題だ」と俺に指導する。根本的な意識があれば適切な結果に辿り着けるはずだ、と。ただそれはこれまでの半生を上手にやってきた人の話で、俺にとっては、こういうのは意識ではなく反復によるパターン学習を経ないと習得できない。"誠意の型"を習得する必要がある。ただ他人と話すことでさえかなり訓練した。記憶を振り返ると、保育園にいた4〜5才の頃、他の子供にバカと言って泣かせてしまい、先生から「自分が言われたら嫌でしょう!」と怒られたが、(自分はバカではないから言われないだけで、バカがバカと言われるのは当たり前だろ)と思っていた。そういう問題ではないのに気付いたのもここ10年くらいだと思う。俺の社会性は演繹法ではなく帰納法で成り立っており、「こういうルート取りはまずいっぽい」と「この場合はこういう"型"をとると良いっぽい」を繰り返して培ってきた。そんな俺からすると、クレームの当事者の気持ちをわかることは至難の業だから、彼らと一緒に石を投げる気にはならなくて、むしろしまむらレゴランドの担当者の気持ちを思うと苦しい気持ちになる(これらの文章からも、俺は自分のことばかり考えているのがわかる)。クレーム対応はモノの補填のみならず、相手の気持ちに寄り添うこと、わかってはいるが上手にやるのはなかなか難しいよなあ。

そんなわけで、俺が抱えていたトラブルはなんとか片付いたのだが、さきの2件のニュースは全く他人事に思えず、何が良くなかったかを考え直したり、自分が抱える問題とか人生での失敗を振り返ったり。そんな頭の中だった昨日、昼食に、とあるうどん屋さんに入り、うどんとミニかき揚げ丼のセットを頼んだ。かき揚げにかじりつくと、中からどろりと液体が。衣が中まで揚がっておらず、食べられない状態だった。悩んだ。ミニかき揚げ丼はたかだか200円、文句をつけて返してもらいたい額ではない。かき揚げは揚げるのが難しく、中が半生になるのはあるあるだから強く攻める気もない。ただ、このかき揚げは食べられない、残さないといけない。残したら気付いてしまうだろうか。失敗作を提供してしまった、返さなければならないお金をもらってしまった、と。であればここで申告し、お互いスッキリとした方がいいのだろうか、でも、申告したらどうなる?現物を確認する、厨房に持って帰る、謝りにくる、注文キャンセルか作り直しを迫られ、会計時に再度謝られるだろう。たかが200円のために現場をかき乱したくない。俺もこんなことでペコペコ謝られたくない。そこまで食べたくもないのに作り直すなんて言われたらどうしよう・・・・・・・うどんを平らげ、かきあげの下のタレがついたご飯(これがうまい)だけをたべ、半生のかき揚げをわざと割っておいて、何事もないように会計、足早に立ち去った。(他人に寄り添う・・・他人に寄り添う・・・)とひとりごちながら、久しぶりにtwiceを聴いてみたら、彼女たちの活力が、乾いた心に満たされていき、急速に励まされ、空が青かったことを思い出したのであった。