値上げはつらいよ2

晴れ。シンプルに暑い。こんばんは、直井怜です。

 

小売業界は苦境に立たされている。一部の熱烈かつ狂気的なファンを抱えたショップやブランドを除けば、全ての小売業とメーカーは毎日頭を抱えている。理由は強烈な円安、原料高、運賃の高騰といった、二重三重の足かせだ。端的に表現すれば、今までの同じ製品を作ろうとしても、今までよりも高いコストがかかってしまう。あらゆる企業が値上げを発表するのはそういうわけで、何もわかってないアホは、余計に儲けようとしているとか考え出すが、ハッキリ言ってこの値上げラッシュの中で余計に儲けようなんてしている企業はほとんどないだろう。もちろん、より良い業績を目指すためのアクションなのは確かだが、基本的に儲けはうまくいって横ばい、しかし多くの企業は厳しい結果に終わるのではないか。

儲けというのは、商品単品について言えば(売価ー原価)なのだが、現在は原価が爆裂に上がっているので、売価をあげても儲けは増えない。仮に、原価の上がり幅<売価の上がり幅になるように値上げしたとして、これによって増えるのは値入であって粗利ではない。利益を取ろうとしてはいるが、実際に売れなければ一円の儲けにもならないわけだ。

小売業が値上げをするということを、消費者は甘く考え過ぎている。というか、消費者が値上げという事象を甘く捉えているからこそ、小売業は値上げということを極めて慎重に判断しなければならない。値上げをすれば売上点数が減る(高いものをお客は買わない)という現実を毎日突きつけられているのが小売業であり、値上げによって食べていけなくならかもしれないという不安とも日々戦っている。売価を横ばいにして内容量を減らす"ステルス値上げ"について、「容量そのままで潔く値上げしてくれ」という声も多いが、そんなものは嘘だというのを小売業はよくわかっている。何よりも価格が売上に直結するのだ。消費者は、値上げされた商品を見て、「高くなったのね、仕方ないか、今日は買わずに我慢しよう」という判断ができる。仮にこの判断が値上げに対して"理解"を示し、自身の財布事情と相談した"善良な"行動だったとして、それが積み重なれば売上は減り、当然儲けの金額も減っていく。値上げに理解を示すというのは、「値上がってもそのまま買い続ける」以外にはないのであるが、所得も上がらない現況で、金もないのに買えというのは不合理というか、自然には受け入れられない感覚だろう。だから、小売業は値上げができないのだ。値上げが即座に自分の首を絞めることがわかっているからだ。それなのにいま、これだけ値上げラッシュが起こっているというのは、つまり、、、やばいのである。本当に倒れてしまうかもしれない、もう耐えられないところまできてしまっていることがご理解いただけるだろうか。

もう誰が悪いのかもわからないが、毎日毎日本当につらい。今までのことが維持できない。どんなものなら高くても買ってくれるだろうか、お客さんは満足してくれるだろうかと誰もが考えている。別に、このことを無邪気な消費者に八つ当たりしようとは思わない。高いと感じれば買わないのは自然な消費行動であり、ない袖は振れないのである。ただ、あなたがこんど値上げを見た時は、その裏にあるのは笑顔ではなく苦渋の顔だということは覚えておいてもらえたら嬉しい。