ロマンスの神様

雪!すごい!こんばんは、本田翼です。

雪のことは好きだ。スキー楽しいし、雪をぶつけるのも好きだ。なにより、実家にいた頃、雪寄せをやらなかったからだとおもう。

雪国の人間は雪を憎んでいる。少なくとも俺の両親はそうだった。雪深い土地では、雪によって玄関や車庫などが塞がれるため、毎日の雪寄せが欠かせない。雪そのものの量を減らすことはできない(お湯などで中途半端に雪を溶かすというのは絶対にやってはならない)ので、雪のある位置を移動させる必要がある。だいたい、朝と夜に行うが、休みの日などは夕方も行う。一回の雪寄せには、少なくとも1時間、アベレージで2時間くらいやってるイメージがある。だいたい12月の中頃から雪が降り始めるので、そこから雪が降るなくなる2月末までの約3ヶ月間、ほぼ毎日この作業を行う。うちの両親も60を過ぎているが、毎朝4時に起きて雪寄せをしてから出勤、帰ってきても雪寄せである。だから俺の親は雪が嫌いだ。雪が降るということは雪寄せが始まる。雪寄せが始まるということは、1日24時間のうち20%弱が、他の土地であれば不要な作業に費やされているということだ。狂気の沙汰、はたから見たら、なんでこんな苦労をしてまでこの土地に住んでいるのか疑問さえ湧いてくるだろうが、そこに生まれてしまったのだから仕方ない。

さて、そんな雪寄せだが、俺は人生でほとんどしていない。「滑ったり車にはねられたりして怪我されても困る」「子供にはこんなことよりもやるべきことがある」という二つの理由からだ。なんどか手伝ったことはあるが、雪寄せにも熟練が必要であまり戦力にならなかったようでもある。そんなわけで俺は雪にはいい思い出ばかりだ。雪寄せによってうずたかく積み上げられた雪山の上で遊ぶのも楽しかった。スキーも無限に滑れるくらい好きだったし、しんしんの雪が降る中にいるだけでも心が落ち着くようだった。俺は中学の時サッカーをやっていたが、学校にサッカー部はなかったので地元のクラブチームに所属していた。冬は野外でスポーツはできないのでフットサルをやるのだが、学校が終わると歩いて練習場所の体育館まで移動していた。雪深い道、ザクザクと雪を踏む音だけが響く移動時間が好きだった。体育館への移動と、そこから家に帰るまでの道。それぞれ30〜40分くらいかかっていたんじゃないだろうか。でも好きだった。本当に一人きりだと感じられたし、頭の中にも雪が積もってまっさらになっていくようだった。

上京してからは雪の中を歩き回ることなんてなくなったが、ここ何年かは後輩とスキーに行っていて、その時はやはり、頭の中と雪原が同化していくような心地を味わうのである。